郷愁に浸る

私にとってのSFは故郷のようなものです。『失われた世界』『生きている首』などの古典SFは小学生だった私を空想世界へ導いてくれました。シャーロック・ホームズやルパンなどと一緒に図書室にあった本を片っ端から読んでいった私ですが、SF以上に私を引きつけたものはありませんでした。

 

アジモフファウンデーションシリーズやクラークの2001年シリーズは傑作ですが、自分の中でひときわ存在感を放っているのはクラークの『幼年期の終わり』です。

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クラークの作品はすべて読んだわけではありませんが、ハヤカワ版のこの作品は何度も読み返したものです。

第1部に手が加わったの版が出たのはずいぶん前から知っていましたが、なぜかこの本は電子書籍ではなく紙の本で読みたいと思っていました。昨日、久しぶりに図書館を訪れて探してみると棚にあったので、手に取りました。

 

SFは科学でありながら哲学であり宗教である、ということを体現している本書は、何度読んでも感動します。FSSにも影響の大きいこの作品は、飽きが来るということがありません。ネタバレを避けるために内容については触れませんが……オーヴァーロードの悲哀とジャンの歓喜の言葉を含んだこの作品は、SFというジャンルの中でも記憶されるべき質の高いものでしょう。

ただタイトルが長いだけで中身のない作品が多い中で、この優れた文章に触れれば小説というものがいかに豊かなものをもたらしてくれるか、小説とはいかなるべきであるかを知ることが出来るでしょう。

 

正直この作品を映像化できるとは思えませんが、もし可能なら見てみたいものです。上帝の姿をいかに表現するかは、ある意味難しいでしょうし、上霊の姿を如何に作品にふさわしく表現するかは更に困難でしょうが……。

気まぐれに寄った図書館でしたが、良い収穫がありました。

 

 アマゾンで探してみたらビックリ、こんな表紙になっていました。私の知っている表紙はもっと硬派だったはずですが……(^_^;)